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台風の接近に備えての技術対策について

2019.08.13

滋賀県農業技術振興センター農業革新支援部

水稲

1.台風通過前の対策

 ①事前に排水路の詰まり等の点検・補修を行い、冠浸水時の速やかな排水に備える。

 ②出穂期から穂揃期にかけては風害を受けやすいため、やや深めに水を張る。

 ③成熟期に近いものは台風襲来前に多少早目でも刈取りするのがよい。

2.台風通過後の対策

 ①冠水した場合、葉先を水面に出すよう速やかな排水に努める。

 ②冠水の著しいほ場においては、白葉枯病等の発生が懸念されることから、排水後、病害の発生動向に十分注意する。また、冠水や浸水の被害を受けた稲体は水分調整、肥料吸収等の機能が低下していることから、田面の過度な乾燥に注意する。

 

大豆

1.台風通過前の対策

 事前に排水路の詰まり等の点検・補修を行い、冠浸水時の速やかな排水に備える。

2.台風通過後の対策

 ①冠水または浸水した場合、速やかな排水に努める。

 ②冠水の著しいほ場においては、茎疫病や葉焼病等の発生が懸念されることから、排水後、病害の発生動向に十分注意し、発生を認めたら殺菌剤を散布する。

 

野菜

Ⅰ施設野菜(雨よけを含む)

1.台風通過前の対策

 ①パイプハウスが耐えられるのは風速25m程度(アーチパイプ25mmφ、50cmピッチ、間口6.0m)で、補強パイプを入れた通称コンクラハウスでも風速32m程度と考えられる。内作に影響がなければ、フィルムは除去しておく。内作がある場合はハウスを密閉し、隙間や破れ、緩みを点検し補修する。

 (ハウスバンドの締め直し、バンド固定用のパイプや番線、らせん杭の点検、フィル  ムの補修、ドアの補強等)

 ②換気扇があるハウスでは、出入口を密閉して換気扇を稼働させ施設内を負圧にする。

 ③風圧を弱める対策として防風ネットをハウスの軒高と同じか少し高いくらいに設置する。

 ④パイプ埋め込み部分が水で緩くならないよう、ハウス周囲の排水溝を点検して手直しする。

 ⑤強風により、資材・木片・小石等が飛来して被覆資材が破損しないように、施設周辺を清掃しておく。

 ⑥生育中の野菜がない簡易パイプハウスなどでは被覆資材を巻き上げて軒の部分にくくり付ける。

 ⑦鉄道沿線や幹線道路沿いのハウスではフィルム等が飛散し、2次的な大事故の原因とならないように十分に注意する。

2.台風通過後の対策

 ①速やかにほ場の排水を行い、停滞水のないようにする。

 ②吹き返しの風の強さや方向に注意しながら、サイドビニールの巻き上げ・天窓の解放を行って、施設内温度をできるだけ早く降下させる。

 ③茎葉に付着した泥などは、速やかに水で洗い流す。

 ④野菜や苗等のしおれが甚だしい場合は、寒冷紗やべたがけ資材等を被覆して、植物体温の低下と蒸散の抑制を図る。

 ⑤茎葉の被害により、細菌病などの病害が発生しやすくなるので被害株や被害葉を除去し、防除を徹底する。

 ⑥草勢を回復するため、台風通過後に液肥の葉面散布・追肥を行う。また、土壌表面が固まっている場合は軽く中耕する。

 

Ⅱ露地野菜

1.台風通過前の対策

 ①排水溝をさらえるなど排水に努める。また、排水口は必ず作っておく。

 ②収穫中の野菜は早めの収穫を行う。

 ③播きつけ直後のものは、種子の露出を防ぐために寒冷紗等で被覆する。幼苗期のものは、台風前に土寄せや土入れを行って株の揺れを防ぐ。

 ④風速が強くなる場合は、事前に誘引ネットやテープを切って、畝の上におろし、上から防風網や寒冷紗等で押さえるなど動かないように固定し、台風の通過後に元に戻す。

 ⑤ほ場周辺に防風ネットまたは防風垣を設置する。

2.台風通過後の対策

 ①速やかにほ場の排水を行い、停滞水のないようにする。

 ②被覆資材で被覆している場合には、できるだけ早く除去し、付着した泥を水で洗い流す。

 ③風雨で損傷を受けた場合は、殺菌剤を散布し予防に努める。

 ④支柱を立て直し、誘引する。

 ⑤株元が露出したり土壌が固まっていれば、天候の回復を待って株元へ土寄せを行い、畝全面を軽く中耕して通気性をよくする。

 ⑥豪雨により肥料の流亡が考えられる場合は、速効性の窒素やカリ肥料を追肥する。

 ⑦草勢の回復を図る場合は、薄い液肥の施用や葉面散布が効果的である。

 

果樹

1.台風通過前の対策

 ①収穫期にある果実は、強風程度と果実の成熟程度に応じて、やや早めの収穫を行う。

 ②幼木や品種更新のために高接ぎしたものは、支柱を立て枝折れが起こらないよう主枝枝や幹をしっかり誘引し固定する。

 ③ナシ、ブドウ、キウイフルーツなどの棚栽培をする果樹は、強風が棚面をあおって被害が大きくなるので、太い棚線の交差部分に重さ2kg程度のおもりをぶら下げて上下の動きを少なくする。棚線や支柱の強度、欠損箇所を確認し、支柱を増やしたり、棚線を張り直して緩みをなくすなど、棚自体を補強する。防風、防虫ネットを設置している園ではネットの結び目等を確認する。

 ④パイプハウスに対する対策は野菜に準じる。

 ⑤事前に排水路の詰まり等の点検・補修を行い、冠浸水時の速やかな排水に備える。

2.台風通過後の対策

 ①速やかにほ場の排水を行い、停滞水のないようにする。

 ②落葉や枝葉の損傷が激しい場合は、樹の被害程度に応じた着果量に摘果する。

 ③風雨で損傷を受けた場合は、傷口から病気の感染の恐れがあるので、殺菌剤を散布して予防に努める。

 ④倒木した場合は速やかに起こし、支柱などにくくりつける。枝が裂けた場合は傷口を合わせ結束する。折れた場合は切り戻し、癒合剤を塗布する。

 

花き

1.台風通過前の対策

 ①施設に対する対策は野菜に準ずる。

 ②事前に排水溝を点検・補修し、長期滞水にならないよう注意する。

 ③畝の両端の親支柱や中間支柱をしっかり立て直し、中間にクイを入れ補強する。

 ④ネットは頂点から3分の1程度下がったところで支持する。

 ⑤収穫直前のものは、早めに収穫する。

2.台風通過後の対策

 ①滞水した箇所については、速やかに排水を行う。

 ②倒伏した場合は、茎が曲がる前に修復し、土などの汚れを洗い落とす。

 ②病害が発生しやすくなるので、病害防除を徹底する。

3.小菊の対策

 ①台風が来る前に固めの切り前で収穫し、常温で水揚げ、保管後に出荷する。

  「調整」→「水揚げ」・「常温で良いができるだけ涼しい場所での保管」→「箱詰め前の再度切り戻し」を必ず行う。

 ②台風が去るのを待って午前に収穫し、通常出荷をする。

  風雨による花弁や葉の傷みは、高温、ムレにより症状は重くなるので、収穫後の水揚げや調整作業時は、通常よりばらけさせて取り扱う。収穫時に葉や花が濡れているときは扇風機などで乾かし、ムレを防ぐ。

 ③次年度用の親株についても、排水対策を行うとともに、台風通過後は病害防除を行う。

 

1.台風通過前の対策

 ①明渠を設置している場合は、溝をさらえるなど確実に排水が行われるよう点検しておく。

2.台風通過後の対策

 ①強風により新梢が傷ついて病害発生の恐れがある場合は、殺菌剤の散布を行う。

 ②幼木園で、株元の土が流亡した場合は土寄せを行う。また、幼茶樹が倒伏した場合は、根をできるだけ傷めないように株を立て直し、土寄せを行う。

 ③防霜ファン、茶工場(煙突等)の点検および修復を行う。

 

畜産

1.台風通過前の対策

 ①畜舎等の施設に雨、風が吹き込まないように、入り口や窓をしっかり閉めておく。

  弱い部分は強風で破損しないよう補強する。特に、ハウス等の簡易な施設は、支柱やビニール押さえのバンドを増やし、カーフハッチ、防暑用の資材などは飛ばされないよう対応する。また、吹き込んだ雨で飼料等が濡れないよう畜舎内を整理しておく。

 ②飛来物による施設等の損傷を防ぐため畜舎周辺の整理に努める。浸水のおそれがある  場合は、堆肥舎に水が流れ込んだり、ふん尿が流れ出さないよう土のうを置く。

 ③飼料作物の栽培ほ場は、排水を徹底しておく。

2.台風通過後の対策

 ①畜舎に雨が吹き込んだ場合は、風通しを良くし、乾燥に努める。特に湿った敷き料は  に速やかに交換する。

 ②飼料作物栽培ほ場は、滞水しないよう速やかに排水を行う。

 ③倒伏した飼料作物は放置すると品質の低下を招くので、ほ場の乾きを待って速やかに収穫作業を行う。